2026年8月24日

こんにちは。新宿、都庁前の歯医者「医療法人社団 歯友会 赤羽歯科 新宿診療所」の歯科医師の飯塚です。
本コラムでは睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる、スリープスプリントについて、特徴やメリットデメリットについてお伝えしたいと思います。
1.スリープスプリントとは?

スリープスプリントとは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のうち、主に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対して使用する歯科用のマウスピース型装置です。
睡眠中に下顎を適切な位置まで前方に移動させた状態で保持することで、舌やその周囲の組織が気道をふさぎにくくし、睡眠中の空気の通り道(気道)を確保することを目的としています。
2.睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中に呼吸が何度も止まったり、呼吸が浅くなったりする病気です。
睡眠中に呼吸が止まると、体内の酸素が不足し、そのたびに脳が覚醒に近い状態になります。
そのため、本人は十分に寝ているつもりでも、
・朝起きても疲れがとれない
・日中に強い眠気がある
・集中力が低下する
・起床時に頭痛がある
・大きないびきをかく
・睡眠中に呼吸が止まっていると指摘される
などの症状が現れることがあります。
睡眠時無呼吸症候群には、大きく分けて閉塞性と中枢性があります。
今回ご説明するスリープスプリントが主に対象とするのは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS:Obstructive Sleep Apnea Syndrome)です。
3.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)はなぜ起こるのか?
OSASでは、睡眠中に舌や喉の周囲の組織が後方へ移動することで、空気の通り道である上気道が狭くなったり、ふさがったりすることが主な原因です。
代表的な要因として、
・肥満
・下顎が小さい、または後方に位置している
・舌が大きい
・扁桃腺などが大きい
・鼻づまり
・加齢
・骨格的な特徴
などが挙げられます。
特に肥満の場合、体の外側だけでなく、舌や喉の周囲にも脂肪が蓄積することで、気道が狭くなりやすくなります。
また、仰向けで眠ると重力によって舌が後方へ下がりやすくなるため、さらに気道が狭くなることがあります。
4.睡眠時無呼吸症候群を放置するとどうなるのか?
OSASでは、睡眠中に何度も呼吸が止まることで、血液中の酸素濃度が低下したり、睡眠が分断されたりします。
その結果、日中の眠気や疲労感だけでなく、長期的には高血圧、心血管疾患、脳血管疾患などとの関連が知られています。
また、強い眠気によって仕事や運転中の事故につながる可能性もあります。
そのため、単なる「いびき」と考えず、症状が気になる場合には一度医療機関で検査を受けることが大切です。
5.スリープスプリントはどのように作用するのか?

スリープスプリントは、睡眠中に下顎を前方へ移動させた状態で保持する装置です。
下顎を前方に移動させることで、舌やその周囲の組織も前方に保たれやすくなり、睡眠中に上気道が狭くなるのを防ぎます。
簡単に説明すると、
下顎を前に出す
↓
舌や喉の周囲の組織が前方に保たれる
↓
気道が確保されやすくなる
↓
睡眠中の無呼吸・低呼吸を減らす
という仕組みになります。
ただし、すべてのOSASに同じような効果が得られるわけではありません。患者さんの重症度や骨格、歯や顎の状態などによって適した治療方法が異なります。
CPAPとの違い

睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療には、CPAP(持続陽圧呼吸療法)があります。
CPAPは、鼻などに装着したマスクから空気を送り、その圧力によって睡眠中に気道が閉塞しないようにする治療です。
一方、スリープスプリントは、マウスピースによって下あごを前方に移動させ、気道が塞がりにくい状態を作る治療です。
そのため、「スリープスプリントとCPAPのどちらが優れている」という単純な話ではなく、睡眠時無呼吸の重症度や患者さんの状態に応じて治療方法を選択します。
日本呼吸器学会では、特にAHIが20以上で日中の眠気などを認める場合、CPAPが標準的治療とされています。一方、軽症例などでは口腔内装置が治療の選択肢となります。
スリープスプリントを保険診療で作ることはできるか?
スリープスプリントは一定の条件を満たせば健康保険で口腔内装置を製作できます。
睡眠時無呼吸症候群について医科で診断を受け、口腔内装置による治療が必要と判断された場合に、医科から歯科へ診療情報提供・治療依頼が行われます。
その情報をもとに歯科で口腔内の状態を確認し、装置を製作します。
治療の内容にもよりますが大まかな費用は2.3万円前後となります。
スリープスプリントのメリット
スリープスプリントには、次のようなメリットがあります。
① 寝ている間だけ装着する
日中に装着する必要がなく、睡眠中に使用します。
② CPAPより小型で持ち運びやすい
CPAPのような機械やホースを使用しないため、旅行や出張などにも持っていきやすいという利点があります。
③ 手術を必要としない
口腔内に装置を装着する治療なので、外科的な処置を必要としません。
ただし、効果には個人差があり、すべての患者さんに十分な効果が得られるわけではありません。
スリープスプリントの注意点・デメリット
スリープスプリントにも注意点があります。
装着開始時には、
・口の中の違和感
・唾液が増える
・顎の疲れ
・顎関節周囲の違和感
・歯の噛み合わせの変化
などが生じる場合があります。
また、歯の本数や歯周病の状態、顎関節の状態などによっては、装置の使用が難しい場合があります。
そのため、装置を作れば終わりではなく、装着後の調整や経過観察が重要です。
スリープスプリントの治療の流れ
STEP 1 口腔内の診査
まず、歯科でお口の状態を確認します。
具体的には、
・装置を支えるための歯が十分にあるか
・虫歯がないか
・歯周病がないか
・歯が大きく動揺していないか
・顎関節に問題がないか
・噛み合わせに問題がないか
などを確認します。
必要に応じてレントゲン撮影などを行います。
STEP 2 下あごの位置を決める
次に、顎に無理のない範囲で下あごを前方へ移動させ、その位置で噛み合わせの記録を取ります。
ここで重要なのは、
「できるだけ前に出せばよい」というわけではない
ということです。
治療効果と顎関節・歯への負担のバランスを考えながら、患者さんに適した位置を設定します。
STEP 3 装置を装着し、調整する
完成した装置を装着していただき、実際に使用した際の違和感や痛み、装置の適合状態などを確認します。
必要に応じて装置を調整し、適切な位置に合わせていきます。
口腔内装置は、装着後の調整も治療の重要な一部です。
スリープスプリントの使い方
基本的には、就寝前に歯を磨いてから装置を装着して眠ります。
朝起きたら装置を外し、装置も歯ブラシと水で洗浄して清潔に保ちます。
ただし、歯磨き粉がついた状態ですとマウスピースが傷ついてしまうため歯磨き粉は落としたのちに磨いてください。
綺麗にした後は水中につけておくか濡れたティッシュ等で包んで保管していただきます。
装着開始後の注意点
装着開始直後は、口の中に異物が入るため、違和感を覚えることがあります。
また、朝に装置を外した後、一時的に噛み合わせがいつもと違うように感じることがあります。
多くの場合は時間とともに慣れていきますが、
・強い顎の痛み
・顎関節の痛み
・歯の痛み
・噛み合わせの違和感が長時間続く
・装置が合わない
などがある場合は、無理に使用せず、歯科医院に相談してください。
まとめ
スリープスプリントは、単なる「いびき防止用マウスピース」ではありません。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に対して、下あごを前方に保持することで睡眠中の気道閉塞を軽減するための治療装置です。
ただし、OSAには軽症から重症までさまざまなタイプがあり、すべての患者さんにスリープスプリントが適しているわけではありません。
まずは医科で適切な検査・診断を受け、そのうえでCPAPや口腔内装置など、患者さんの状態に適した治療方法を選択することが大切です。
「いびきが大きい」「寝ているときに呼吸が止まっていると言われた」「日中眠くて仕方がない」
このような症状がある方は、単なるいびきだと思って放置せず、一度医療機関へご相談ください。
そして、口腔内装置による治療が適していると判断された場合には、歯科でお口や顎の状態を確認したうえで、一人ひとりに合わせたスリープスプリントを製作します。
「いびきが気になるけれど、どこに相談すればよいかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
いびきや睡眠時無呼吸症候群、スリープスプリントのことなら新宿都庁前の歯医者「医療法人社団歯友会 赤羽歯科 新宿診療所」
監修
奥田陽介
東京歯科大学卒業
医療法人社団 歯友会 赤羽歯科 理事
新宿診療所 院長
斉藤 沙耶
日本歯科大学卒業
日本歯科大学大学院 口腔外科学 修了
歯学博士
新宿診療所 医局長
森田健斗
日本歯科大学卒業
日本口腔インプラント学会
日本顎咬合学会